「グラフは、縦軸が人口100万人あたりの感染者数を、横軸が日付を示します。そして、国ごとに違った色の折れ線グラフで感染者数と日付が分かるようになっています。」

「『グラフが同じような角度で立ち上がっている』というのは、イタリアやスペイン、フランス、スイス、ドイツ、イギリス、米国、カナダなどの折れ線グラフが同じような角度で立ち上がっているということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「しかし、折れ線グラフが同じような角度で立ち上がっている国があるからと言って、『脳に感染している可能性が高い』とは言えないのではないでしょうか」と町会長。

「おっしゃる通りです。イタリアやスペイン、フランス、スイス、ドイツ、イギリス、米国、カナダなどの折れ線グラフが同じような角度で立ち上がっているのは、医療文化が同じだということを示していると推定しています。」

「医療文化と言いますと?」と町会長。

「例えば、新型コロナウイルスが流行っているときに、咳が続いたら、その国においては、標準的な人間はどういう行動をとるかというような、その国特有の行動様式のことです。」

「先ほどの7カ国は、医療制度が同じなのですか」と町会長。

「医療技術は同じだと言えますが、医療制度は違います。例えば、米国では65歳以上の人や障害者には、公的な保険制度がありますが、65歳未満の人は自費で支払うことになります。ところが、イギリスでは、国が運営する国民保険サービスがあり、利用者の経済的な支払い能力にかかわらず利用が可能で、原則無料で提供されています。」

「それでは、無料であれば、咳が続いたら医者に行くが、自費だったら行かないということになりませんか」と町会長。

「僕もそう思ったのですが、もし、そうだとすれば、イギリスは経済的に破たんしているはずです。」

「なるほど。自由主義経済の国では、国が運営する国民保険サービスであっても、経済の原則を無視して存続させることはできないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。感染者数のグラフを見ると、イギリスと米国の折れ線グラフはほぼ重なっています。」

「医療制度が全く違うのに、イギリスと米国の折れ線グラフは、ほぼ重なっているのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。米国の祖国はイギリスですから、医療文化が似ていて、病気になったときの行動様式が似ていても不思議はありません。」

「なるほど。先ほどの話だと、イギリスと米国の折れ線グラフが、人口100万人あたりの感染者数を表しているのではないということでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。感染したかもしれないと思う人が病院に行って、その病院にSARS-Cov-2の感染を検査できる体制が整っていて、感染を確認できた人の数です。実際には、感染者が接触した人が調査され、加わることがありますね。」

「感染していても、病院に行かない人や病院に行ってもSARS-Cov-2の感染を検査しない人の場合は、感染者数に入っていないということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。信頼がおけるのは、感染者数ではなく、死者数です。イギリスや米国では、肺炎で亡くなった患者が新型コロナウイルスに感染していたかどうかをチェックしなかったケースは、それほど多くないと推定しています。しかし、イタリアのように医療が崩壊しかけている国では、高齢者の死亡者が増えているのに、SARS-Cov-2を検査をしないで埋葬されたケースが多いと言われています。」

2020/4/3

※第百九十四話は、新型コロナの感染者が初めて世界的に広がろうとしている時の話です。

2023/3/16